名前探しの放課後(下)

昨日の夜から上巻を読み始めた。
下巻を読み終わる頃には、今日の朝になっていた。

名前探しの放課後(下)

名前探しの放課後(下)

おもしろかった。
辻村深月は、これの他に『凍りのくじら』を読んだ。
『凍り〜』もおもしろかったけど、『名前探し〜』の方が、よりおもしろかった。
他の辻村作品、全部読もう。うん。
ちょうどいいことに、ポポに前から借りっぱなしだし。
以下の感想(?)は軽いネタバレ(?)を含みますので注意。



一昨日に行った辻村深月サイン会での出来事。
「先輩は、もう読みましたか?」
私に、このサイン会の存在を教えてくれた、文学研究会の後輩が私に聞いた。
「まだ読んでないよ」
手に入れたのは、かなり前なのに、私はまだ一行も『名前探しの放課後』を読んでいなかった。
「そうですか。いやー、これラストがすごくて」
私は一瞬、顔をゆがめてしまったような気がする。けれど気付かれないよう笑顔に戻す。後輩は続ける。
「もうホントにびっくりしましたよー」
ああ。と心の中でため息をつく。聞きたくなかった。その情報は聞きたくなかったよ。
最後にどんでん返しがあるなんて、あらかじめ知っていたら、純粋に楽しめないじゃないか。



聞かされなくても、予想できたことだと思う。辻村深月はミステリ作家だし、この小説が連載していたのは『メフィスト』というミステリ専門誌だ。ミステリにどんでん返しがあるのは普通。というか読者の予想を裏切ってこそのミステリである。
けれども。
人の口から、読んだ人の感想として「ラストでびっくり」なんて、聞きたくなかった。



その情報を得たことで、私は読んでいる最中、無意識のうちにずっと構えてしまっていた。
ラストでびっくり。ということは、普通に読んでいたらミスリードするはずだ。つまり、今、小説内に起きている事象は、別の見方をすれば、別の意味合いを持つのかもしれない。
ここが伏線なのか? それともこっちか? 何気ないシーンも、しっかり記憶するよう意識する。特に、少しだけ違和感を感じたシーンや、省略されたシーンは要注意だ。そこに含まれた意味を文脈どおり素直に予想すると、誤解してしまう可能性が高い。



ラストのどんでん返しとは、こうなのではないか。それともこうか。頭の中で何パターンもの真相が導き出される。
そして、ついにラスト近く。今まで抱いていた認識が覆される場面。



結論から言うと、合っていた。ラストの展開は、細かい部分に違いはあったけれど、大筋では予想していたものと一致していた。私はびっくりしなかった。



この小説は、ラストのびっくりが全て、ではもちろんない。そこにのみ価値を見出す人もいるのかもしれないけれども、私はそうではない。それまでの部分もとても良かった。だから私は「おもしろかった」という感想を抱いた。



でも、びっくりしたかった。
「嘘だろ」「えー」とか声に出して驚きたかった。
あの体中が粟立つような感覚を味わいたかった。



後輩に悪気は全くなかったと思う。宣伝方法として「ラストでびっくり」と帯で煽ることもあるくらいだ。後輩の情報は、人によってはむしろ読書欲をかきたてられる情報だったのかもしれない。
でも、私にとっては逆効果だった。それを聞かなければびっくりできたかもしれないのに、と思ってしまう。



というわけなのだけど、私も全く同じことしてるな。
この感想を読んだ人は「ラストでびっくり」という情報を得てしまった。
でも「以下、ネタバレ含む」って書いたから許されるかな?



ああ! 本の内容にほっとんど触れてないのに、こんなに長くなってしまった!
おもろいですよー。この小説。オススメです。
あと私は読んでないのでよくわかりませんが、他の辻村作品と登場人物がリンクしてるっぽいです。