芥川賞候補作を2作

今度の芥川賞候補作のうち、
文學界2007年12月号掲載作を2作品読んだ。

文学界 2007年 12月号 [雑誌]

文学界 2007年 12月号 [雑誌]

第105回文學界新人賞受賞作。
母国語が、日本語ではない人物が書いた小説として話題に。



選考委員の選評にもあったが「近代文学」という感じだ。
最近多いフリーターだかニートだかが、だらだらぐだぐだやる小説とは一線を画する。



文章は平易で、暖かみがある。
書き手と登場人物の距離のとり方がいい。
それと日本と中国が出てくるが、どちらにも重きを置かず、
扱いが平等で、バランス感覚に優れている、と思う。



ただ、どうしても
「母国語が日本語じゃない人が書いた=すごい」
の構図ができてしまっている気がする。
これが母国語が日本語の人物が書いた小説だったらどうなったのか。
ここまで注目されていたのか。



良い小説、だとは思う。
この作家が今後どう変化していくか、とても楽しみなのは間違いない。



2回連続芥川賞の候補になった川上未映子作品。



真似できそうにない特徴的な文体は今作でも健在で、
ハマるとサラサラ流れるように読めるが、
ノれないと、だらだらとした感じがするかもしれない。



前作は、何だかよくわからんとこがある感じだったが、
今作は、タイトルも内容も読者に歩み寄った感じだ。
わかりやすい。至極真っ当に小説、小説している。



内容、というか文章がとても面白くて、
初潮、豊胸手術卵子とかってキーワードが交差してく感じがいい。
ラストの卵のシーンも、それまであんまり変なシーンが出てこなかったので、びくっとした。



「わたくし率〜」に比べ、毒というか過剰なエネルギッシュさが抜けた感じ。
これを良いととるか悪いととるかで評価がわかれそう。
ああ、これくらい「前衛っぽさ」を消さないと、芥川賞は取れないのだろうか。



あれ? でも前作は、何だかんだ言って、次点、だったんだよね。
なら、これで受賞もあるかな。