ミミズクと夜の王

合気道部同輩、ハイドビハインドに借りました。
第13回電撃小説大賞<大賞>受賞作。
ある書評で絶賛されていて、気になってました。

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

泣いた。
めっちゃ泣いた。
まっすぐで、清々しい感動をもらった。
すげえ。
直球だ。



文章は平易。
設定だって、そこまで珍しいわけでもない。
ただ、
真正面から飛び込んでくる。
見事にやられました。

私安い話が書きたいのよ、と、熱に浮かされた病人みたいに、たち悪くくだを巻く酔っぱらいみたいによく言ったものです。私安い話が書きたいの。歴史になんて絶対残りたくない。使い捨てでいい。通過点でいいんだよ。大人になれば忘れられてしまうお話で構わない。ただ、ただね。その一瞬だけ。心を動かすものが。光、みたいなものが。例えば本を読んだこともない誰か、本なんてつまんない難しいって思ってる、子供の、世界が開けるみたいにして。私が、そうだったみたいに。そういう、ね。ああ。小説を、書きたいな。(「あとがき」より)

その目論見は、おそらく成功するだろう。
その図が、容易に想像できる。



「あとがき」のその他の部分を読む限り、
著者は同世代か、少し下っぽい。
また、才能のある人が世に……



以下、少しだけ、内容に触れます。
ネタバレあるので未読の方は気を付けてください。



内容を簡単に説明します。
この小説は、
死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王のおはなし。
両手両足を鎖でつながれた少女<ミミズク>は、
魔物のはびこる夜の森に分け入って、
魔物の王に自らを食べてもらおうと願う。
それは、美しい月夜のことだった。



てな感じ。
とにかくね。
登場人物が、一人残らず、全員
「やさしい」
世界観の詳しい説明がないから、
この登場人物たちが暮らす世界は
どこかぼんやりしていて、それもいい。
ラストもまっすぐで、
読後に、あたたかい気持ちになれる。



「泣ける小説」には
「読者を登場人物に感情移入させて、殺す」
必要があると思っていたけれど、
「殺す」「死ぬ」までいかなくても、
「泣ける」のだなあ、と改めて思った。