大人ドロップ

芥川賞候補作「さよならアメリカ」でデビューした樋口直哉の最新刊。
書き下ろし長編小説。表紙イラストは浅野いにお
中沢先生に貸していただきました。

大人ドロップ

大人ドロップ

版元が小学館であることから、予想がつくかと思いますが、
「さよならアメリカ」や「月とアルマジロ」とは、全く違った印象。



大人でも子どもでもない時代を描いた青春小説。
「自分でも自分の気持ちがよくわからない」感じが描かれている。
途中まで、乙一の「未来予報」に似ている気もしたけれど、
読みきってから考えると、そんなに似ていなかったかもしれない。



ってか「野中ハル」って!
冬目景の「イエスタデイをうたって」の登場人物と同じ名前じゃないっすか!*1
この小説でも「ハル」とカタカナで呼ばれているし、
キャラもちょっとだけ、かぶっている気がするし……

思わず読書を中断して「イエうた」を読み返しちゃいましたよ。


大人になるって本当にどんなことなのだろう? とぼくは思った。そんな『答えのない問い』を自分に問いかけ続けることをやめることなのかも知れないし、当てのない夢を見ることを諦めることかもしれない。(130頁より引用)

という記述に、考えさせられる。
『答えのない問い』
私も、小さい頃はよくそれについて考えていたけれど、
最近は考えなくなったように思う。
大人になったのだろうか。



作品と関係ないけれど、
この小説のコピーのひとつ、
「大人になるって、どういうこと?」
って、コルネーリア・フンケの『どろぼうの神様』のコピーと一緒だ。

*1:漢字は違うんですけどね。「晴」と「春」。